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Daisuke Kono

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脱衣所で体を[]き終わったトオルは、下着だけ新しいものに替えると下はさっきのジャージをはいた。自称化け猫のカイもまだ体が[]れていたので、トオルが使ったバスタオルで体を拭いてやった。まだ恐怖感があるせいか、トオルの腰は引けている。
 
「あの…さ、お前。しゃべるのって…誰にでもできるのか?」
 
トオルはカイの体を拭きながら尋ねた。
 
「うん?ああ、一応な。ただ、オレは誰にでも話しかけるわけじゃあない。高貴[・・]な存在だからな。なんたって、化け猫様だ。」
 
高貴[・・]…はぁ。」
 
さっきから[]べるだの末裔[まつえい]だの…猫にしてはえらく難しい言葉を使うなと、トオルは思った。いや、言葉が話せる猫にとってはこれが当たり前なのか…。
 
「お前、歳は一体いくつなんだ?」
 
「オレの歳か?そうだな、かれこれ25,6年生きてる…これでもまだ半分も生きてないんだ。オレたち化け猫一族は、長いのになると100年以上生きるものもいる。まぁ、他の猫たちに一目置かれているのには、そういう部分もあるだろうなぁ。」
 
「100年…はぁ。」
 
トオルはまたため息をついた。「『オレたち』ってことは、こんなふうに話をできる猫が日本のどこかにまだ存在しているということか?しかも寿命が100年って…」トオルは大げさだが、日本の国の行く末を[うれ]えた。
 
「あのさ。悪いんだけど、母さんには話かけたりしないでくれるか?たぶん、お前がしゃべってるのを聞くと、卒倒[そっとう]しちゃうと思うんだ。もういい年だしさ…頼むよ。」
 
トオルの母、幸子もこれまでいろいろなことを経験してはいるだろうが、さすがに猫に話しかけられたことはないだろう。心臓発作でも起こされたら大変だと、トオルは思った。
 
「はいはい。まぁオレはどちみち、オレが見込んだヤツにしか話しかけないからな。そういう意味でトオル!お前はオレに見込まれたんだ。誇りに思えよ!」
 
カイの体を拭き終わったトオルは、濡れたバスタオルを洗濯物用のかごに入れ、脱衣所の入り口に向かった。
 
「そうだ、トオルよ。お前さっきからお前お前ってオレを呼ぶがな。オレには「カイ」っという類まれな素晴らしい名前があるんだよ。だから、オレのことは「カイ」って呼べよな。もしくはカイさま[・・・・]でも良いけどよっ!」
 
呼ばない!カイ様[・・・]とだけは絶対呼ばない!それじゃ、逆に人間が猫に飼われてるみたいじゃないか!とトオルは思った。
 
「わかったよ。カイ[・・]!」
 
トオルはそう言うと脱衣所のドアを開けて、幸子がいるキッチンに向かった。


卒倒[そっとう]:貧血などにより、意識を失って倒れること。
[うれ]える:悪い状態になるのでないかと心配すること。
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