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Daisuke Kono

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「え?先生の猫?」
 
カイ(・・)って、名前なの?」
 
教室中が少しざわついた。「今ならまだシラを切って外に追い出すこともできる。しかし、後で飼っていることがバレると、嘘をついたことに子供たちは傷つくかもしれない。でもカイは、カイは…化け猫だ!もしここでコイツがしゃべったりしたら…とんでもないことになる!」トオルは少しの間、逡巡(しゅんじゅん)した。
 
「えっと…そ、その猫ね。ごめん、先生が昨日から飼い始めたネコなんだ。なんか寂しくてついてきちゃったみたいだね。名前は「カイ」っていうんだ、よろしくね。でも、動物がいることがわかると他の先生にも怒られるから、外に出さないとね。いいかな?」
 
トオルはそう言うと、カイの方へ行って首の後ろを(つか)み持ち上げた。「よし。これでこのまま外へ出せば大丈夫だろう」そう考えてトオルが窓から外へ出そうとすると、一人の女の子がトオルに向かって叫んだ。
 
「待って!この時間だけでいいから、カイもいっしょに授業受けちゃダメ?
 
トオルは少したじろいだが、その生徒の方を向くと、
 
「う~ん、教室には動物を入れちゃいけないからねぇ。他のクラスにはアレルギーの子もいるだろうし、規則だからね。」
 
と言った。するとクラスで最も活発な一人の男子生徒が、
 
「このクラスに動物アレルギーの人いますかぁ?いたら手を挙げてくださーい!」
 
と、大きな声でみんなに聞いてみた。教室はしーんとなり誰も手を挙げなかった。
 
「いいじゃーん、先生!今日だけだよぉ。おねがーい!」
 
教室中にお願いコールが()き起こった。
 
「でもねぇ。」
 
トオルがそう言うと、「ブ~ブ~!」「勉強したくな~い!」と教室はアンチトオルの雰囲気になった。サッカーなどでいうところのアウェーのスタジアムに一人で乗り込んだ気分だ。
 
「わ、わかったよ。でも他の先生には言っちゃダメだよ!それに今日この1時間だけだからね!今度カイが入ってきても絶対に追い出します!いいね?わかった?」
 
「はぁーい!」
 
みんな一斉(いっせい)に声を上げた。トオルはようやくホームに戻ってこれた。「しかし、ホントに大丈夫か?バレたら間違いなく呼び出しだよな。でもそんな事よりも、今はコイツの行動の方が問題だ!」トオルが不安気にカイの方を見てみると、また大きな欠伸(あくび)をしていた。


逡巡(しゅんじゅん)する:決断できないで、ぐずぐずすること。
※アンチ:「反~」、「非~」、「抗~」を表す接頭語で、特定の個人や団体などを嫌う者のこと。
※アウェー:スポーツで敵地、またはそこでの試合のことをいう。地元ファンの数、地元審判の判定など、アウェーでの試合は基本的に不利な場合が多い。(⇔ホーム)
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