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Daisuke Kono

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石川五右衛門!?あの大泥棒がカイの祖先の飼い主だって?それ…本当なのか?」
 
「ああ。」
 
トオルは驚きを隠せなかったが、カイはさらに話を続けた。
 
「トオル、お前にはまだ言ってなかったよな?オレたち、化け猫一族が生まれた理由。」
 
「あ、ああ。まだ聞いてないけど…。」
 
トオルがそう答えると、カイは自分たちの祖先のことについて話してくれた。
 
〈その昔、時は400年以上前の安土桃山時代。当時、の町を騒がす石川(いしかわ)()()衛門(もん)なる大泥棒がいた。彼とその盗賊仲間たちは、大金持ちや悪党、権力者を相手にしか盗みをしないということで、豊臣政権に不満があった町民たちの中には、彼らの狼藉(ろうぜき)ぶりを支持する人間も少なからずいたという。また、彼らの中には職人生業(なりわい)とする者や忍びの筋の者など、各方面における手練(てだ)れの連中も多かったと言われている。
しかしある時、一人の仲間の裏切りにより、石川は京都所司代(しょしだい)に捕らえられることになる。その時代の盗人(ぬすっと)に対する処罰はとても厳しいもので、処刑の対象は罪人の家族や仲間、飼っている動物にまで及ぶほどだった。石川は他の者の処罰の軽減を役人たちに強く訴えたが、それも結局聞き入れてはもらえず、捕えられた者たちは全員処刑された。また、石川は「トラ」という飼い猫を大変かわいがっており、その猫も同じ日に処刑される予定になっていたのだが、役人たちの過失や不手際もあり、深い傷を負ったまま現場から逃げ出す事態になってしまった。その後、愛する主人やその家族、自分を可愛がってくれた五右衛門の仲間の処刑を()の当たりにしたトラは、自らの血肉と裏切り人や処刑人への恨みの念を()らい続け、やがて強い怨念(おんねん)を持った「化け猫」へと変わっていってしまう。
 
それからというもの、京の町では化け猫騒動が頻繁(ひんぱん)勃発(ぼっぱつ)し、町民たちの間では「石川の呪い」などという噂が広まり始めた。これに事態を重く受け止めた豊臣秀吉は、町に妖怪退治の御触(おふ)れを出す。そして石川が処刑されてからちょうど1年後に、化け猫トラは数人の陰陽師(おんみょうじ)たちによってついに退治されることになり、敗れたトラの骨などは全てしかるべき場所に埋葬されてしまった。しかし、石川の盗賊仲間の中には捕縛(ほばく)から逃れた者たちが数人存在したのだった。彼らはトラが埋葬されている墓を見つけ出し、トラが身につけていた石川が特別に作ったという「金の鈴」を掘り出す事に成功する。その後、上手く逃げ(おお)せた彼らによって、自分たちが盗んで手に入れた金やその「鈴」を日本のとある場所に隠してしまった、という話をカイは母猫から聞いたのである。〉
 
「そして、そのトラには完全に化け猫になってしまう前に生んだ子がいた。その子の血を引き継いでるのがこのオレってわけさ。さらにな、石川の仲間の誰かがその宝を隠すときに、宝を手に入れるための道具をいくつか作ったらしい。そのうちの1つがあの「導きの器」だ。オレはその特徴を母親から聞いて知っていた。だからあの器を見たとき、母親が言ってた器なんじゃねぇかと思ったんだ。しばらくは店に潜り込むためにあの周辺を調べてたんだが…どうも上手くいかなくてな。」
 
そうか!だからカイはあの駐在所にいたのか…トオルは納得がいった。
 
「それにオレの母親の話じゃ、もし化け猫の血を受け継いでいる猫が宝といっしょに眠っていると言われる「金の鈴」を身につければ、祖先のような強い化け猫の力を現代によみがえらせることもできるっていうんだ。」
 
「な、なんだって!?」
 
「なぁ、トオル。オレに力を貸してくれないか?「金の鈴」を取り戻すためには、人間であるお前の力が必要だ。」
 
トオルはしばらく考え込んだ。そして、思い立ったようにカイに尋ねた。
 
「ちょっと待てよ、カイ。お前はそんな「鈴」を手に入れてどうするつもりなんだ?そんな物が手に入ったら、正真(しょうしん)正銘(しょうめい)の化け猫になっちゃうんじゃないのか?そうなったら、何かに化けたり人間を襲ったり…お前がそんな事になるんだったら、俺は協力できないぞ!」
 
するとカイは、首を振ってこう答えた。
 
「違うんだ、トオル。オレが「鈴」を手に入れたいのは、一族の力を取り戻すためじゃない。オレは一族の力を…封印したい(・・・・・)だけなんだ!」
 
「封印?どういうことだ?」
 
トオルにはカイの言っている意味がよくわからなかったが、カイはそのまま続けた。
 
「現代では科学がかなり進歩してるだろ?おそらく近い将来、人間たちに「石川の宝」も「鈴」も発見されてしまうことになる。化け猫一族の血を引く猫の中には危ないヤツもたくさんいる。もしそんなのに「鈴」が渡っちまえば、今の時代では退治できる人間は数少ない。そうなったら、世の中は大変なことになる。実際に「鈴」を奪ったヤツラは全員、しばらくしてから原因不明の死を()げたというふうに聞いてる。あれはきっと呪われた代物(しろもの)なんだ。だから今度はオレが先にその「鈴」を見つけて、この先二度と誰にも見つかられないように……海にでも捨てちまおうと思ってるんだ!!トオル、お願いだ。オレに協力してくれ!オレに力を貸してくれ!!」
 
「カイ、お前…。」

トオルはそれを聞くとどうにも(こら)えきれなくなって、カイをガバッと抱き寄せて頬擦(ほおず)りをした。
 
「カイ~~!お前はエライ!!やっぱり…エロくてグルメでワガママなだけじゃなかったんだな!」
 
「ぐぅわぁ~気持ち()りぃ!!やめろよ、トオル!!」
 
カイは必死でトオルの腕からすり抜けた。
 
「バカ野郎、オス同士で何すんだ!ハァ、ったくよ……。ちなみにな、トオル。例の道具は器以外にまだあと2つある。「宝」と「鈴」を見つけるには他の2つも必要になるはずだぞ。」
 
トオルは、まだ2つもあるのかと思わず天を(あお)ぎそうになったが、すぐに気を取り直して言った。
 
「よし、わかった!そういうことなら協力してやる!とりあえずまずは、あの「導きの器」を手に入れればいいんだな?」
 
「ああ!」
 
二人はそう言ってお互いの決意を確かめ合うと、沈みゆく夕日を背に自分たちの家に向かって歩き始めた。

今ここで、トオルとカイの壮大なトレジャーハントが本格的に幕を開けたのである。
 
 
狼藉(ろうぜき):乱暴なふるまいのこと。
生業(なりわい):生計を立てている職業。
手練(てだ)れ:熟練した技、あるいはそれを持つ人のこと。
※京都所司代(しょしだい):織田信長が1568年に京都の治安維持のために置いた機関。
御触(おふ)れ:役所などから民衆に出す命令や通達。
陰陽師(おんみょうじ):民間で加持・祈祷(きとう)・占いをする者。ここでは、霊媒師の要素も含む。
※天を(あお)ぐ:(なげ)いて顔を空に向けること
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