忍者ブログ

Daisuke Kono

home information youtube profile mail
blog song photograph link
その日の夜、二人は2階にあるトオルの部屋で器の中から見つかった古地図(こちず)を眺めていた。地図にはいくつかのなどとその名前、集落を結ぶ、さらに小さな民家お城のような絵まで書かれてあったが、字の方は(くず)し書きされてある上、紙が古すぎてほとんど読めなくなってしまっていた。
 
「しかし、まさか器の中に地図が隠されてるなんてな。その器を割ってくれた生徒に感謝しないといけないな。」
 
カイは感心したように、そして皮肉交じりに言った。
 
「はは、そうだな。しかもその器が骨董屋にあったなんて…木の葉を隠すなら森の中とはよく言ったもんだよ。それに、どこよりも器を丁寧に扱う骨董屋だったら器が欠けたりしない限り地図が見つかる可能性はほとんどないからな。今の今まで見つからなかったのも不思議じゃない。」

トオルはそう言うと、さらに詳しく地図の中身について確認してみた。

「えっと…地図で×印のようなものが付いてる場所がある。この「…ヶ原」?と小さな丸のようなものが中にいくつも書かれた三角の図形だけど、これだけじゃ名前も場所もわからないな。それにこの別の場所に書いてある2つの言葉は何だろう?(こん)「なきわら」?周りの字が消えかかってはっきり読めないけど…これって地名じゃないよな。何かのメモ書きだろうか?」
 
「う~ん?」
 
カイも皆目(かいもく)検討もつかないといった表情をしている。
 
「もしかしたら宝の隠し場所のヒントかもしれないし、これに関しては時間があったら調べてみるよ。ところでカイ、お前の方はどうなってる?」
 
実はカイは、トオルとは別のルートで五右衛門の宝について調べている所だった。
 
「ああ。今、野良(のら)たちから情報を集めてるところだが、今のところ、有力な情報はまだなさそうだな。」
 
カイはあらゆる猫たちの上に立つ化け猫一族の末裔(まつえい)である。そのため、日本全国の猫に顔が効く。しかし、猫1匹の移動範囲は知れているため、各地域の情報を握っているボス猫から別の地域のボス猫へと猫伝いに伝達する方法をとっているのだそうだ。さらに、彼らの中には情報屋なる猫もいるらしい。「猫のコミュニティも意外にしっかりしているものなんだな」と、それを聞いた時のトオルは思った。
 
「ところで今、石川五右衛門のことについて調べてるんだけど、その出身地には三重や大阪、京都、静岡などいろいろな説があるらしいんだ。でも、お前の祖先にあたる「トラ」と五右衛門たちが京都にいたこと、「導きの器」が古伊賀(こいが)だったことなんかを考えると、三重京都辺りがかなり怪しいと思うんだが。」
 
「そうだな、可能性は高いかもな。」
 
「俺、明日にでも図書館に行ってこの地図の場所を探してみるよ。図書館にお前を連れて入るわけにはいかないから、カイは引き続き、できれば猫たちからその辺の情報を集めてくれ。」
 
「わかった。特に西方面の情報を増やすように他の野良たちにも言ってみる。」
 
次の日、トオルは図書館へ出かけた。「もしこの地図を書いたのが五右衛門に近い人間だとしたら、おそらく安土桃山時代後期あたりのものだろう。その頃に書かれた古地図を探した方が良さそうだな」トオルはそう考え、図書館の中の地図や郷土コーナーなどで京都や三重に関する本をできる限り詳しく調べてみた。すると、安土桃山時代のものではなかったが、江戸時代初期に書かれた道中絵巻物の中に運よくそれに近いものが見つかった。
 
「あった、これだ!…島ヶ原(しまがはら)!資料でも「島ヶ原」自体は、1000年以上前から存在している歴史ある場所で、京都と伊賀を結ぶ街道がある交通の(かなめ)とある…おそらく間違いないな!となると、こっちの場所は…?」
 
トオルは書かれてあった情報をメモに取って古地図をコピーすると、急いで家に帰った。
 
 
その日の夜、カイはなかなか帰ってこなかった。幸子はかなり心配していたようだが、トオルは「必ず帰ってくるから大丈夫」と言って母を慰めた。夜の10時をまわった頃だった。2階の部屋の窓の外で「ニャ~」という猫の泣き声がしたので窓を開けると、泥と雑草まみれになったカイが屋根の上に座っていた。
 
「どうしたんだ、カイ!?大丈夫か?」
 
「ああ、ちょっと遠くまで行ってたんだ。それより地図の方はどうだった?場所はわかったか?」
 
「ああ、何となくな。今、最近の地図と照らし合わせてる所だ。とりあえず、そのままじゃ家に上がれないから先に風呂に入れてやるよ。」
 
トオルはカイをお風呂場に連れて行って汚れを落としてやった。幸子はカイを見て泣きそうな顔をしていたが、元気なカイの姿を見て安心したのか、すぐにご飯を用意した。カイはご飯を食べ終わると、トオルといっしょに2階の部屋に上がって宝探しの会議を始めた。
 
「よし、まずじゃあ俺からだ。この古地図はどうやら伊賀(いがの)(くに)とその周辺について書かれたもののようだ。読めなかった「…ヶ原」は「島ヶ原」って地名らしい。現在の地図で言うと三重県伊賀市の西端に当たる場所だな。西には京都、東には伊賀流忍者発祥(はっしょう)の地で知られる伊賀上野(いがうえの)もある。もしお前の言う通り五右衛門の仲間の中に忍者のような者がいたとしたら、この場所でほぼ間違いないんじゃないかな。そして、三角形の図形の方はおそらく現代地図の位置から考えると、そのすぐ近くにある山のどれかだと思う。候補がいくつもあってまだ絞りきれてはいないけど…カイ、そっちはどうだった?」
 
トオルが尋ねると、カイはコクンと(うなず)いて答えた。
 
「ああ、オレの方も確認してみたんだが、関西から来た猫たちの中に一匹だけ、そこに近い場所から来たヤツがいた。そいつは飼い主の都合でこっちに引っ越してきたみたいだが、確かにその辺りには石川五右衛門が生まれた地という話があることはあるらしい。あと、他にも気になる情報があるんだ…。」
 
「どうした?」
 
カイが浮かない表情をしたのでトオルは聞いてみた。
 
「どうもこの宝を探している人間が他にもいるっていうんだ。そいつらは宝探しのために京都や三重周辺の山々や古墳なんかを荒らしまくってるって噂だ。警察にも何度か注意されたことがあるみたいだぜ。あと話によると、そいつらは3人組で自分たちのことをこう呼んでいたとか…「トレジャーハンター」だって。」
 
「何!?トレジャーハンター!?宝探しの専門家のことじゃないか?そいつらも五右衛門の仲間が隠したっていう「鈴」を探してるのか?」
 
トオルが尋ねると、カイは首を横に振った。
 
「いいや、たぶんそいつらは「鈴」のことは知らないだろう。あくまで「宝」が目的のはずだ。だがかなり危ないヤツもいるみたいでな…実はそのうちの一人に猫仲間が一匹()られてる!
 
「ま、まさか…。」
 
「トオル。オレたちが石川の宝を探してることはあまり人には言わない方が良い。そいつらに知られたら、かなり危険だぞ!」
 
トオルはカイの言うことに同感した。
 
「そうだな。あ、それとカイ、もうすぐ学校が夏休みに入るんだ。夏休みのどこかで俺はしばらく長い休みを取るつもりだから、そしたらいっしょに三重にある島ヶ原に行こう。何日かかけて五右衛門の仲間たちが隠した「金の鈴」を見つけるんだ!」
 
トオルがそう言うと、カイは少し照れくさそうな顔をした。
 
「トオル、悪い…ありがとな。お前にはホント感謝してるよ。」
 
と、カイがらしくない(・・・・・)言葉を使ったので、
 
「バカ、乗りかかった船だ。飼い主に遠慮するなよ。」
 
と言って、トオルはカイの頭を()でてあげた。カイはゴロゴロと(のど)を鳴らし気持ち良さそうな顔をしていたが、自分とカイ以外にも宝探しをする者たちがいることに、そのときのトオルは(いく)ばくかの不安を感じていた。
 
 
※コミュニティ:密着している地域社会のこと。直訳すると「共同体」の意。
※道中絵巻物:江戸時代の陸路や海路を記した、水平に連なる巻物状になった地図のこと。
伊賀国(いがのくに):かつての三重県西部、上野盆地一帯にあった国の名称。現在の伊賀市、名張市に当たる。また、伊州(いしゅう)と呼ばれることもある。
PR
この記事にコメントする
お名前:
タイトル:
文字色:
メールアドレス:
URL:
コメント:
パスワード(8文字以内):   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバックURL
カレンダー
08 2017/09 10
S M T W T F S
2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
最新トラックバック
トラックバック…リンク先の相手にリンクを張ったことを通知する、相互リンク機能。
ブログ内検索
携帯用バーコード
忍者ブログ [PR]